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〈定位哲学講座〉
この肖像の周囲に記された EN QUAM MODICE HABITAT PHILOSOPHIA というラテン語は、「見よ、哲学(つまりホッブズを指しています)はなんとつつましく暮らしていることか」という意味で、この肖像が描かれた当時すでに八〇歳に達しながらまだ執筆活動を続けていた高名な哲学者ホッブズのつつましい暮らしぶりを讃えています。
『リヴァイアサン』のタイトルページ左に置かれた扉絵は、十七世紀の書物にしばしば見られるもので、この時代(バロック期)に特徴的な寓意表現を用いてこの書物の意図を暗示しています。このエッチングは、フランスのアブラハム・ボスの手になる作品で、当時イギリスの宗教戦争がらみの内乱で、フランスに避難していたホッブズの意向を汲んで制作されたことが知られています。 図の中央に立つリヴァイアサン、すなわち君主(統治者)は、王冠を戴く強大な巨人で、右手に地上の権力の象徴である剣を、左手にキリスト教的権威の象徴である司教杖を振るい、彼の前には地上の風景が広がっています。その下中央には、この本のタイトルが書き込まれた縁飾り付きの布が垂れ下がり、その左側下には城、宝冠、大砲、マスケット銃・スティック・旗・ドラムなどから成るトロフィー(勝利記念)、一番下には戦場が描かれ、これらはこの地上の力を代表します。 これと対照させて、右側には教会、司教冠、教会紛争と教会裁判などが描かれ、これらは教会の権力を代表しています。 つまり、リヴァイアサンはこの両者の上に立ち、二つの権力を統率し統治する絶対的な存在として描かれているのです。
これがまさしく、ホッブズの説く強権国家のイメージでした。 | ||||||||
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