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真空管から固体素子へ
機器分析の研究は物性や化学などは基礎科学の研究と言ってよいのですが、電通大の主要な分野である電気通信の応用研究でも電通大が果たした役割は大きいのです。
宇宙研究での宇宙からくる電波の原因の天体の物理学や南極観測で電通大グループの成果として残る南極雪原の電波の吸収の発見とその後の研究などの電波伝搬に伴う研究も多いのですが、ここでは将来の電気通信技術のもとになるかもしれない電子素子のいくつかと超伝導回路の研究をあげましょう。
映像、音声、などの信号を電波に代えて運び、その電波の信号をとらえて雑音から分離したり大きくしたりする電子の制御は、電通大が始まる1950年代までは真空管が主な道具でした。ところがゲルマニユーム、シリコンなどの固体の半導体が発見されトランジスターがつかわれるようになると真空管の持っていた役割が半導体トランジスターに代わると、産業界だけでなく、電通大の教官や学生や技術員の関心も無線機やテレビの回路の技術だけでなく、固体物性の基礎の勉強に大きく変わりだしました。若手の技術員が集まって、最近先生方の話す言葉が分からなくなってきたと、量子力学の勉強会をはじめたのも60年代の初めです。
半導体素子の研究
電通大では1960年代のはじめ、できたばかりの電子工学科の半導体研究室ができ有機半導体でトランジスターができるかどうか、という問題に有機物でもっとも伝導度の良い黒鉛
(グラファイト)を有機物の熱分解と蒸着で作り、窒素やケイ素を含ませて、2次元の黒鉛分子の面に平行な方向と垂直な方向で同時にn型とp型ができることなどを発見して、今日まで続く、炭素素材の研究(パイロライテックグラファイト、蒸着ダイヤモンド、C60サッカーボール分子、カーボンチュウーブ、グラフェン、など)の先鞭をつけたものでした。その後も半導体材料の研究は続きヒ素を含む化合物半導体やC60誘導体などの研究に連なります。
電通大の教員、技術員、学生の関心が次に一斉に大きく変わるのは、しばらく後の70年代のコンピューターの導入による情報処理技術があります。沖電気の当時の「大型」電子計算機が入ったときは学長以下殆どの教官、技術員が講習を受け、プログラミングの勉強をしたものでした。
真空管からトランジスターへの世界の電気通信技術の変化は、電通大の学科編成で材料工学科、物理工学科が作られる時期と一致していますし、コンピュータによる情報処理への流れと計算機学科や数理工学科の設立とも並行しています。
超伝導回路の研究
しかし通信の基礎技術でもう一つの変化がおなじころ、多くの教職員や学生の関心がまだ薄い領域で始まっていました。
従来の技術をはるかにしのぐ性能のセンサー、増幅、ミキサー、情報処理機能が極低温の領域で発見されていたのです。
それがジョセフソン効果を使った超伝導電子回路です。固体の金属素子で半導体の一種と思われがちですが、動作原理は全く異なり極低温の量子現象を利用した次の時代の通信・情報技術の一つと考えられ将来期待される研究の一つです。
第7展示室では近い将来超伝導回路の展示を計画しています。電通大では60年代に研究が開始されていました。
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