深沢レポート
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マヤからの報告2(由紀)
ホンデュラス〜南ベリーズ
1995年9月(準備中)
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北ベリーズ〜グゥアテマラ、マヤ紀行
深沢武雄
8. クエージョ遺跡
クエージョ遺跡は、オレンジ・ウォークの西のはずれの農場の中であるという。それは、現在、私有地となっており、遺跡を訪ねる際は、あらかじめ所有者の許可が必要とガイドブックにはある。既に陽は低く西に傾きかけた時刻でもあった。もうその日は諦めなくてはならないかとも覚悟した。しかし、着いて見ると、農場の入り口がラム酒工場になっており、まだ操業中で管理者に頼むと快く私たちの願いをきいてくれた。遺跡は、工場の奥に拡がる牧場の中であるから、自由に見てもらってよろしい。ただし、牛や羊が逃げては困るので柵だけは、必ず元通りに鎖をかけておくようにということだった。
ラム酒工場の東のはずれから農場に入ると、そこは既に遺跡の中だった。農道の東側に深々とした森が続いていたが、その森は、まさにマウンドの森であり、木立に覆われた大小さまざまな小丘がかなり奥の方まで続いているのが柵の外からもはっきり見えた。
遺跡は、そのマウンドの森だけではなかった。森の繁みがきれたその先には、地平線に届かんばかりの広大な牧場が開けており、その草地の中にも点々とマウンドらしき小丘が見える。中でもすぐ眼についたのが遺構350だった。陽の光もすっかりと西に傾き、しっかりとした輪郭をもつ石の構造物の西半分が、草地の真只中で燦然と西日に輝いている。近ずくと遺構は、高さ5メートルほどの神殿であり、その量感あふれる石組みの塊には堂々たる風格があった。
遺構350の頂上から見ると農道の反対側にもうひとつ同じような規模の構造物が眼についた。それは遺構39と呼ばれるマウンドで、近ずいてみるとまだ発掘のあとが生々しく、選別からもれた土器などの破片がそこかしこに散らばっていた。破片の中には表面の彩色がまだ鮮やかに残っているものもあった。ひょっとするとここにはもっと色々なものが落ちているかも知れない。私はその「宝探し」の方が面白くなり、しばらくは、その頂上付近のまだ草木に覆われたままの場所を重点的に探し廻った。成果は、小さな土器の破片が3つばかりであったが、どれも大したものではなかった。関先生に言わせれば、こういう場所で出土品の残骸を探すには、上よりも下のほうに限るのだそうである。考えてみればもっともな話しではある。
遺構39から柵をひとつくぐりぬけてマウンドの森に近ずいて見る。途中の開けた平地にもわずかながら盛り上がった構造物の跡が幾重にも帯状に連なっており、その先の一帯が、かつては相当大規模な祭祀センターであったことが想像できる。マウンドの森も内部は見た眼以上に奥が深く、丸みを帯びたものやら土塁に似た方形のマウンド、それに球技場を思わせるような対になったマウンドやらがずっと奥まで密集していた。クエージョは、マヤ遺跡の中でも最古の部類に属すると聞いてはいたが、その規模がこれほど壮大なものとは思ってもいなかった。今後の更なる発掘調査と、できれば復元が期待される。
その日の晩は、あの騒がしいディスコ付きのホテルを避け、オレンジ・ウォークから少し南に下ったタワーヒルの河畔のホテルに泊まることにした。そこは、ラマナイ遺跡へ行く舟が出る場所でもある。ニューリバーの堤防下に船頭の家があり、明日のボートの予約もついでに済ますことができた。また、ホテルのオーナーがシガーの好きなアメリカ人と聞き、少し安心した気持ちにもなった。クレジットカードも、もちろん、OKだという。いわゆる常識の通じる世界に戻ったのである。私も、結局は、アメリカ文明の落し子に過ぎなかったわけである。
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