21世紀の到来まであと残すところ数年と迫り、内外ともに新たな価値観を求めて模索する時代となって
おります。写真ルポルタージュ「失われた文明」は、かかる時代から近未来への指針を模索すべく、
現存する内外の文化遺産、歴史、自然を直接肌で感じ取り、その風景の中に省察の原点を求めようとする
試みとして企画しました。
「マヤ神殿」は、その第一ステップとして昨年夏から現地取材を行っているものです。マヤ文明は、既に私たちには馴染みのアジアやヨーロッパの文明とは完全に隔絶された新大陸の地峡で形成発展し、コロンブスの到来時には既にその大半が住民から放棄され、熱帯雨林のジャングルの中に埋没されていたという世界的にも類稀な壮大かつ神秘に満ちた存在であります。その文明の担い手は、約1万5000年頃にベーリング陸橋を経由して新大陸に移り住んだモンゴロイドの子孫たちで、私たち日本人とは同じルーツをひく人々といわれております。錯綜とした今日、しばし、異郷に培われた同胞の遺産に触れてみるのも一興かと存じます。1995年8月。
深沢武雄:e-mail:takeo@texnai.co.jp