Maya Temples/深沢レポート



ベリーズ・シティー

 その日の晩は、ベリーズ・シティーまで車をとばし、スイング・ブリッジの北にあるコルトン・ハウスというペンションに泊まることになっていた。明日の予定は、シュナントニッチもしくはカラコルであるが、実際どうするかはバスの都合にまかせることにした。

 暗闇のせいか、ベリーズ・シティーに入った時の印象は、必ずしも気持ちのよいものではなかった。空港を通り過ぎ、市の北側から何本かの運河を渡ってダウンタウンに至るわけであるが、その街の中心部が予想以上に暗く、貧困と不潔さをもろに感じさせるような街並みだった。狭い路地に迷い込んだ時には、恐怖感さえ覚えた。昼間のニューリバーの舟旅が余りにもさわやかであっただけにその落差は大きかった。これが世界一のサンゴ礁を擁するダイビングのメッカ、ベリーズ・シティーかとも思った。

 幸い私たちの泊まるコルトン・ハウスは、清潔感あふれる英国風の木造建築で、アメリカ大使館などが立ち並ぶ比較的閑静な住宅街にあった。オーナーは英国人の老紳士で、前職を引退後、自宅に少し手を加えて現在のペンションにしたのだという。

 コルトン・ハウスの隣には台湾領事館と中華料理屋が仲良く軒を並べていた。腹を空かせていた私たちは、荷物を車から降ろすと、とりあえず、その中華料理屋に飛び込んで夕食をとった。

 ところで、この中華料理の店がベリーズではやたらに多いことに気付く。その理由を地元の誰かに聞いたことがあるが、かつてベリーズは外貨を稼ぐために金で永住権を売っていた。それに飛びついたのが海外に脱出したい中国本土の人達だった。以来、ベリーズには急に中国人の数が増え、同時に中華料理の店も増えたのだという。嘘か本当か怪しい話しではあるが、とにかく、ベリーズでは中華料理屋が目立つ。そして、その料理の味も微妙にカリブ化していてうまい。

 ベリーズ・シティーの名誉の為にいえば、翌朝、陽の光の下で見たベリーズ 市街は、昨晩感じたほどに暗く悲惨なものではなかった。世界中のどこにでも見られる港町で、市街を横切る運河は、それなりの風情を醸し出していた。


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Editor: Takeo Fukazawa
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